飲酒した翌朝に酒気帯び運転で摘発され、懲戒免職処分となった元中学校教諭坪井香陽(かよ)さん(43)=長野市富竹=が県に処分取り消しを求めた訴訟で、取り消しを命じた一審長野地裁判決を支持し、県側の控訴を棄却した5月29日の東京高裁判決について、県は11日、上告しないと決めた。坪井さんは判決が確定する今月13日に、約4年ぶりに教職に復帰する。 県と県教委が2006年に飲酒運転した教職員への処分を厳罰化して以降、司法判断で懲戒処分が取り消されるのは初めて。ただ、県教委は、飲酒運転した教職員は原則として懲戒免職―との姿勢は変えないとしている。 県教委は同日、県庁で記者会見を開き、他の自治体が同様の訴訟で敗訴する例が相次いでいるとし、「上告しても(逆転勝訴は)厳しい。やむを得ず判決を受け入れた」(田中功教育総務課長)とした。争点となった坪井さんの飲酒運転が故意だったかどうかについて、故意だったとの主張は変わらないとした。また、免職処分取り消し後、坪井さんには懲戒処分等の指針に基づき、停職などの処分を検討するとした。 坪井さんも同日、長野市内で記者会見し、「長くてつらかったが、(上告断念と聞いて)その気持ちが吹き飛んだ」と喜びを表し、「もう一度、初心に戻って教師として歩みたい」と述べた。 判決などによると、坪井さんは09年4月10日夜、長野市内で飲酒して帰宅。翌朝、財布をなくしたことに気付き、車を運転して同市内の交番へ出向いた際、検査で呼気1リットル当たり0・3ミリのアルコールが検知された。 坪井さんが道交法違反(酒気帯び運転)の疑いで摘発されたのを受け、県教委は同年7月に懲戒免職とした。坪井さんは県人事委員会に処分取り消しを申し立てたが棄却され、11年4月に長野地裁に提訴した。 12年11月の一審判決は、酒気帯び運転をした教職員に対する県教委の処分基準について「故意または故意に等しい重過失がある場合に免職、軽過失の場合は原則停職と解するのが相当」と認定。坪井さんは6時間半の睡眠を取るなどしており、「免職処分にする事情が存在するとまでは言えない」とした。二審判決もこれを踏襲し、坪井さんに飲酒運転の故意はないと認定した。(長野県、信濃毎日新聞社)
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