1961(昭和36)年6月下旬の豪雨災害「三六災害」で、上伊那地方最大の被害を受けた上伊那郡中川村の有志らが記念誌「忘れまいあの体験を」を作った。発生から50年の一昨年、同災害を見つめ直す機運が高まったことを受け、記憶を次世代に伝えようと証言や写真などを載せた。 三六災害による村内の被害は、死者・行方不明者18人、流失・全壊家屋97戸。四徳(しとく)地区や滝沢地区など、住民の集団移住で消滅した集落もある。 記念誌では、濁流に押し流された家屋の写真などとともに被害の概要を説明。「『ゴー、ゴー、ガガァー』という音とともに山があちこち崩れ続け水量の増す川から逃げました」「あの時の様子は言葉では表現できない」などの証言や、災害前の四徳地区の集落図なども載せた。 有志は昨年から、三六災害で欠損・流失した可能性がある地蔵の復元や記念碑の建立など、同災害を伝承する事業をしてきた。記念誌はその締めくくりだ。一連の事業のために県内外の約160人から計100万円余が寄せられた。 有志代表で村公民館長の片桐充昭さん(72)は「いつ起こるか分からない災害への備えなど、後世に役立つ資料になればうれしい」と話している。記念誌はA4判、49ページ。350部作った。希望者に一部千円で分ける。問い合わせは片桐さん(電話0265・88・2927)へ。(長野県、信濃毎日新聞社)
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