12日に発表された4~6月期の国内総生産(GDP、速報値)は、年率換算で2・6%増となった。安倍首相はこれを基に、来年春の消費税増税に踏み切るのかどうか。県民には「経済回復を実感できない」という声がまだ多く、増税の判断では「地方の実情を見極めてほしい」との注文が聞かれた。 12日午後、長野市内の証券会社。「情報収集に立ち寄った」という市内の団体職員女性(39)は、消費税率を引き上げるべきだとの立場。先送りすれば「国際的な信用を損なう」と言い、国債の金利上昇につながりかねないと懸念した。 ただ、こうした意見は多くはない。この日、松本市の松本公共職業安定所に就職相談に訪れた安曇野市の求職中の女性(37)は、個人消費が好調なのも「高収入の一部の人が要因ではないか」。仕事は正社員かどうかにこだわっていないが、「給料の底上げが不可欠」と話した。 上伊那郡箕輪町の主婦唐沢一美(ひとみ)さん(45)も景気回復の実感は「全然無い」。県外の大学に通う長男(19)に仕送りしており、高校生の次男(17)もいる。食料品などの値上がりが心配で、消費税率が上がれば「おかずも一品減らさなければならないかも」。増税の是非は「地方の実情をよくみて判断してほしい」と求めた。 一方、長野市、上田市などで宝石店や時計店などを展開する長野市の「ミヤ」によると、前年に比べ全体に売り上げが伸びている。宮本尚武専務(42)は「新規客へ向けた広告などへの反応も良くなった」。 ただ、「給料が上がった」と言う客はほとんどいないといい、景気の先行きが不透明で消費を手控えていた人が徐々にお金を使い始めたとの見方。増税の判断は「消費が冷え込まないようなタイミングを考えてほしい」と話した。 北佐久郡御代田町の建設業大井康史さん(48)は、増税前後で住宅購入費がどう変化するかについて、「問い合わせが相次いでいる」という。増税前の駆け込み需要が期待できるが、増税後は資材費も増加するため、「できれば上がってほしくない」。「低所得者まで景気回復の実感が持てるようになってから増税してほしい」と話していた。(長野県、信濃毎日新聞社)
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