南佐久郡佐久穂町に残る古い建物や街並みを住民に見直してもらおうと、信州大経済学部(松本市)の武者忠彦准教授のゼミ生と県建築士会佐久支部(佐久市)会員は9月5~7日、同町の古い建物などを舞台にしたイベント「光と蔵」を開く。しょうゆやみその醸造場だった建物で地酒などを提供するジャズバーを開き、街並みに沿ってキャンドルをともす。 ジャズバー「くつろ蔵(ト)(くらまると)」は6日午後7~9時と7日午後6~8時、同町穂積のJR小海線八千穂駅近くにある「(ト)醤油(しょうゆ)店」だった建物で開店する。問屋に商品を出す準備をする場所「売場(うりば)」約200平方メートルが主会場。テーブルは直径2メートルほどの醸造用たるの底板を使う。近くの黒沢酒造の酒や地元産のりんごジュースなどを提供し、信州大ジャズ研究会や町民有志が生演奏する。 黒沢酒造からジャズバーまでの道路約80メートルには5~7日の夜、牛乳パックで作った灯籠にキャンドル約200個をともす予定だ。 県建築士会佐久支部の青年女性委員会は2011年度から、佐久穂町の街並みや建物に注目し、活用方法を模索してきた。町内に住む委員の一人が、都市地理学や都市政策論を専門とする武者准教授と知り合いだったことから、武者准教授ゼミも共同で街並みの調査などをすることになった。 ゼミ生は12年度から現地視察や住民への聞き取りなどをし、佐久穂町には金融業や林業で栄えた街並みなど価値ある景観が残っているとする調査結果を本にまとめた。日頃見慣れている住民は価値に気付きにくいのではと考え、今回のイベントを企画した。ゼミ長の高見沢翼さん(21)=3年=は「街並みを違った雰囲気にしたい」と話す。 建物のある一帯は明治期、黒沢家が金融や酒造などを手広く展開した場所で、通りには当時の建物が十数棟残っている。(ト)醤油店の建物は明治20年ごろの建築とみられ、10年ほど前まで使われていた。昨年、ゼミ生が見学し「当時の繁栄が伝わってくる」などと感じたことから、所有者の協力を得て主会場に決めた。(長野県、信濃毎日新聞社)
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