第2次大戦中に国会議員や松本市長を務めた百瀬渡(わたる)(1874~1945年)の評伝などをまとめた「蒙古(もうこ)王百瀬渡の生涯」を、松本市民有志らでつくる顕彰会が出版した。同会は1日、市役所で会見して発表。戦中に軍部を批判するなど、あまり知られていない百瀬の足跡を広めたい―と、未公表分を含め大量の史料を基にした労作だ。 百瀬は日清、日露戦争に従軍。県議を経て、1930(昭和5)年に衆院議員に初当選した。日露戦争の経験から、日中戦争の戦線拡大をめぐって政治介入する軍部を批判したという。長いひげの風貌が、モンゴルに縁のある政治家に似ていたため、「蒙古王」の愛称が付いた。 子どものころに百瀬と面識があり、10年余前から研究する顕彰会事務局長の百瀬和彦さん(86)=松本市神田=が主に執筆。遺族宅に残された手紙など900点以上の史料を参考にした。在職中の国会や市議会の議事録に目を通し、業績などを確認。和彦さんは「中央にしっかりものを言った地方の政治家で、市長時代は工場誘致などで地元に尽くした。業績を少しでも世に残したいと思った」と話す。 本は3部構成で、1部の評伝では神田村(現松本市神田)での生い立ちから市長時代までの活動を掲載。2部は帝国議会などでの発言をまとめ、3部は百瀬の趣味の書画などを写真で紹介している。A4判、250ページ。出版に際し、市民らから寄付を募った。 県内全ての高校や市町村の図書館などに寄贈し、一般用の300部は今月18日から1部4千円で販売。同日には、市内に建てた百瀬の顕彰碑の除幕式をする。 問い合わせは、松本市里山辺の広沢(こうたく)寺(電話0263・25・1302)へ。(長野県、信濃毎日新聞社)
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