県は23日、JR東海のリニア中央新幹線計画の環境影響評価(アセスメント)準備書に対する意見を述べる公聴会を飯田市の県飯田合同庁舎で開いた。事前に申し出た飯田下伊那地方などの15人が公述人(発言者)として出席。工事による水枯れや車両通行に伴う住環境悪化の懸念、動植物の生息環境に与える悪影響など計画への慎重・反対意見が目立った。JRの計画を受け止めた上で、アセスが不十分としてやり直しを求める発言もあった。 路線や作業用トンネルの建設計画が示されている下伊那郡大鹿村からは最多の8人が出席。工事で「人口1200人の大鹿村が10年以上プラント(工場)化する」(青木清さん)など、トンネル工事に伴う河川や沢水などの減少、村内生活道路への車両の流入、観光産業の衰退、人口減少の加速など、環境悪化を懸念する意見が相次いだ。 絶滅の危険が増しているサギ科の鳥「ミゾゴイ」が大鹿村内で確認されたことに「昔から田の神様と呼ばれ、日本の農耕文化を象徴する鳥だ」(小林俊夫さん)など、JRに再度影響を調べるよう求める意見が複数出た。 下伊那郡高森町の春日昌夫さんは、リニアの高架橋などが景観に与える影響について「(予測・評価のための)場所の選定に住民意見が反映されておらず、施設に近い場所での評価もない」と指摘。同町の中川賢俊さんは「全国一律の環境基準でなく、自治体の実情に合わせた基準が必要だ」と訴えた。東京、神奈川からの参加もあった。 県は現在、有識者でつくる県環境影響評価技術委員会で準備書を審議中。公聴会は県環境影響評価条例に基づく知事意見作成手続きの一環で、県は発言内容を同技術委に報告し、準備書に対する知事意見に反映させる。 公述人の公募に応じた15人は、1人15分の持ち時間で環境保全に関する意見を自由に発言した。公聴会は最終日の24日、木曽郡南木曽町公民館蘭(あららぎ)分館で午前10時から正午までの予定で開く。(長野県、信濃毎日新聞社)
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