上田市別所温泉の旅館「柏屋別荘」の社長斎藤三雄さん(84)が、日中戦争で幻となった1940(昭和15)年の東京五輪開催決定を記念して販売された貯金箱を大切に保管している。2020年に東京五輪開催が決まったため、「歴史を知ってもらい、五輪を盛り上げるきっかけに」と近く旅館に展示する。 貯金箱はブリキ製で鐘をかたどっており、高さ9センチほど。金色の表面に五輪や日の丸、棒高跳びや円盤投げの選手の姿があしらわれている。「皇紀二千六百年(昭和15年)」「第十二回オリムピックに備へて」の文字もある。 40年の東京五輪は、36年のドイツ・ベルリン五輪に続く大会として開催が決まった。アジア初の五輪として国内を沸かせたが、日本は日中戦争の拡大を理由に38年に返上した。斎藤さんによると、貯金箱は母親が同年ごろ、「東京で五輪があるからお金をためなさい」と言って買ってくれた。勉強机に飾っていたが、戦後はしまい込んだままだったという。 長野冬季五輪前年の97年、引っ越しのために荷物整理をしていて偶然見つけ、しばらく旅館で飾った。斎藤さんは「敗戦で焼け野原となった日本では、五輪が開かれるなんて思わなかった。(64年の東京五輪も含め)生きている間に3度も東京五輪の決定に立ち会えるとは思わなかった」と話している。(長野県、信濃毎日新聞社)
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