厚生労働省の社会保障審議会の部会が27日、介護保険制度見直しに向け、介護の必要度の低い「要支援1、2」の人向けのサービスの一部を市町村の事業に移行し、所得の多い利用者の自己負担率を高めることなどを盛った意見書素案をまとめたことに対し、県内のお年寄りや事業者からは「市町村によってサービス内容が変わっては困る」「利用を控え、状態が重くなってしまう」などと不安や困惑の声が上がった。 「足首を痛めてから草取りやぞうきん掛けができないので訪問介護は助かっている。(見直しで)同じサービスが受けられなくなると困る」。昨年8月に右足首を骨折した長野市の「要介護1」の女性(77)はこう話す。骨折以降、週1回の訪問介護(ホームヘルプ)を利用しており、訪問介護の市町村事業への移行で、サービスにばらつきが出るのではないかと懸念する。 県によると、2012年度の県内の介護保険給付費は1661億3千万円(速報値)で、制度が始まった2000年度の約2・5倍。見直しは全国的に膨らみ続ける給付費への対応策だ。通所介護(デイサービス)も移行の検討対象。自己負担率は、年金収入が年280万円以上の人を軸に、1割から2割への引き上げを模索する。 東信地方のデイサービス施設の職員は「負担が重くなって利用を控え、状態が重くなっては、かえって給付費の増加につながりかねない」とする。特別養護老人ホーム運営などの「うえだ敬老園」(上田市)の斎藤剛志施設長は「施設利用者に影響が出ないかが心配だ」。 意見書素案は、特養に新たに入所できる人を原則として「要介護3~5」に限定する内容も盛った。 中信地方で特養10施設を運営する松塩筑木曽老人福祉施設組合(事務局・塩尻市)の担当者は、1人暮らしの「要介護1、2」のお年寄りの入所を、家族と暮らす「要介護3、4」の人より優先させる事例もあると説明。制度が見直された場合に「どう対応すればいいか」と困惑する。 「認知症の人と家族の会」県支部代表で宅老所を運営する伝田景光(かげみつ)さん(42)=長野市=は「家族にとっては、制度の対象者が今後、どんどん切り離されていくのではないか―という不安は大きい」と懸念している。(長野県、信濃毎日新聞社)
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