県弁護士会(諏訪雅顕会長)は10日、依頼者から預かった預貯金を私的流用していたとされる松本市の竹川進一弁護士(70)を9日付で除名したと記者会見で発表した。竹川氏は同日、弁護士資格を失った。除名は懲戒処分の中で最も重く、同会での適用は今回が初めてとしている。 同会によると、竹川氏は2010年8月、中信地方の依頼者(故人)の遺言執行者に就任したが、依頼者の遺産目録を作成せず、解約した預貯金1192万円余のうち、1174万円余を私的流用したとされる。遺産受取人が昨年8月、弁護士会に「弁護士と連絡が取れない」と相談して発覚。諏訪会長が9月に懲戒を緊急請求し、裁判官や弁護士などでつくる懲戒委員会が審査していた。 弁護士会は当初、1192万円を横領したとしたが、竹川氏が遺産のうち不動産の名義変更手続きをしていたため、その費用を差し引いて最終的な横領額と認定した。刑事告発は、遺産受取人が望んでいないなどとして、見送る。 一方、同会によると、竹川氏は今回の私的流用とは別に、日弁連が職務規定で金の貸し付けを禁止しているのに、09年から総額約2200万円を貸し付けていたことが分かった。ただ、貸付先や使途について、同会は「除名の主要部分でなく、積極的に調査していない」とした。 諏訪会長は「再発防止策として苦情が多い弁護士とは直接面談する。ほかに会員のメンタル相談なども検討しなくてはいけない」としている。(長野県、信濃毎日新聞社)
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