長野市真島町の自営業金文夫さん=当時(62)=ら一家3人が2010年3月に殺害された事件で、東京高裁(村瀬均裁判長)は20日、一審長野地裁の裁判員裁判で死刑判決を受けた金さんの事業グループ社員伊藤和史被告(35)=長野市、強盗殺人罪などで起訴=の控訴を棄却した。弁護側は即日、上告した。 事件に関わったとされる4人のうち控訴審判決が言い渡されたのは、同グループ社員で水道設備工松原智浩被告(42)=長野市、同罪などで一、二審死刑判決、上告中=と、愛知県西尾市の男性受刑者(55)=強盗殺人のほう助罪などで懲役18年が確定=に続き3人目。 村瀬裁判長は、伊藤被告が控訴審で初めて主張した自首の成立を認めたが、伊藤被告が事件発生直後から警察に事情聴取を受け続け、うそを続けることができなくなったため―とし、「自発性は低く、量刑(刑の重さ)上、大きく斟酌(しんしゃく)できない」とした。 その上で、伊藤被告は松原被告に殺害と現金強奪を提案し、遺体の運搬処分役に男性受刑者を引き込み、事件当日にグループ社員池田薫被告(37)=長野市、強盗殺人罪などで一審死刑判決、控訴中=を呼び出したとし、「犯行を完遂に導いた主導者」と認定した。 伊藤被告は、文夫さんやその長男良亮さん=当時(30)=から虐待を受け、精神的に追い詰められていたとして、極刑回避を求めていた。村瀬裁判長は「(金さん親子から)暴力的な扱いを受け、生活面でも厳しく拘束された」としたが、警察に相談するなど殺害以外の方法の検討も可能だったとして退けた。 弁護人の今村義幸弁護士(長野市)は「被告の置かれた立場を細かく認定していただいたが、それでも死刑回避の壁は高かった」と述べた。 高裁判決によると、伊藤被告は松原被告ら3人と共謀し、10年3月24日に文夫さん宅で文夫さんと良亮さん、良亮さんと内縁関係の楠見有紀子さん=当時(26)=の首をそれぞれロープで絞めて殺害。約416万円を奪い、3人の遺体を愛知県西尾市の資材置き場に埋めるなどした。(長野県、信濃毎日新聞社)
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