長野市真島町の自営業金文夫さん=当時(62)=ら一家3人が2010年3月に殺害された事件で、強盗殺人と死体遺棄の罪に問われた金さんの事業グループ社員池田薫被告(38)の控訴審判決で、東京高裁の村瀬均裁判長は27日、「突発的に犯行に巻き込まれ、被告人には計画性はなく関与も限定的だ」として、一審長野地裁の裁判員裁判による死刑判決を破棄し、無期懲役を言い渡した。 裁判員裁判の死刑判決破棄は全国3例目で、いずれも村瀬裁判長による判決。犠牲者が複数の事件では初めて。長野市の事件で、強盗殺人罪などで起訴された4人のうち、二審で裁判員裁判の一審判決が破棄されたのは2人目。1人目は男性受刑者(55)で、一審判決(懲役28年)を破棄し、強盗殺人罪はほう助罪にとどまるとして懲役18年を言い渡された。この裁判の担当も村瀬裁判長だった。 村瀬裁判長は判決理由で、池田被告は犯行を主導した伊藤和史被告(35)=強盗殺人罪などで一、二審死刑判決、上告中=から「事前に殺害計画を知らされていたが、断片的で犯行予定日も知らなかった」と認定。動機面でも、伊藤被告や共犯の松原智浩被告(43)=同=は、金さんやその長男良亮さん=当時(30)=から日常的に暴力を受けていたが、池田被告への暴力は少なく、巻き込まれる形で犯行に加担した―と認定。「被告人自身の主体的な動機により犯行に参画したという原判決の判断は誤っている」と指摘した。 また現金強奪は、遺体を運搬処分する男性受刑者の報酬に充てるために伊藤、松原両被告が計画したとし、池田被告は「自ら利得しようと考えて加担したとも認めがたい」とした。その上で、「死刑を選択することが真にやむを得ないとはいえない」とした。 池田被告の弁護側は、被告は殺害計画を犯行当日に初めて知り、「断れば殺される」という恐怖から犯行に加担した、などと主張。現金奪取計画への関与も否定していた。 東京高検の青沼隆之次席検事は「判決内容を十分に精査、検討し、適切に対処したい」とのコメントを出した。 高裁判決によると、伊藤被告ら3人と共謀して10年3月24日、金さん宅で金さんと良亮さん、良亮さんと内縁関係にあった楠見有紀子さん=当時(26)=の首をロープで絞めて殺害。現金約416万円を奪い、3人の遺体を愛知県西尾市の資材置き場に埋めた。(長野県、信濃毎日新聞社)
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