絶滅の恐れのある国特別天然記念物ライチョウの保護に向け、環境省が設けた学識者らの保護増殖検討会は4日、2回目の会合を都内で開き、2014年度から5年間の実施計画の概要を了承した。ライチョウの生息する山域のうち、ほかより減り方が著しい南アルプスで優先的に対策に取り組むとし、ひなを専用ケージ(かご)に入れて生存率を高める手法を試験導入すると確認した。来夏から、北岳(3193メートル)周辺で取り組む考えで、実施計画は3月中をめどにまとめる。 検討会には、中村浩志・信州大名誉教授(鳥類生態学)ら委員7人が出席した。従来は研究グループによって生息数の調査方法がばらばらで、データの比較ができなかったため、実施計画では、生息している山域ごとに統一の手法で調査すると明記。キツネによる捕食などが減少の要因と推定されているため、より詳しい調査も進めるとした。 急激な生息数の減少に備え、飼育や繁殖の技術の確立も目指すと確認。大町市立大町山岳博物館などの取り組みの実績や課題を踏まえて検討していくとした。 ケージ内でのひなの保護は南アの北岳周辺で取り組む。14年度はケージの設置場所を検討し、候補地周辺のライチョウの分布調査や餌にしている植物の確認などを進めるとした。委員からは「減少の要因も同時に研究しないと、効果的な対策はとれないのではないか」との意見も出た。 ライチョウは、南アでは約30年前に289の縄張りを確認できたが、2000年代になって約4割に減少。餌になる高山植物も、ニホンジカによる食害や踏み荒らしが深刻化し、昨年11月の検討会などでは南アでの早期対応を求める声が委員らから出ていた。(長野県、信濃毎日新聞社)
↧