県が、県営13水力発電所を中部電力(名古屋市)に売却する民営化計画を正式に取りやめ、県営で発電事業を継続する方針を固めたことが15日、分かった。昨年3月の東京電力福島第1原発事故を機に国のエネルギー政策が見通せなくなったなどとして、ことし6月、中電との交渉を中断。経営見通しを試算した結果、再生可能エネルギーの購入を電力会社に義務付ける「固定価格買い取り制度」の活用などで健全経営が可能と判断した。 県企業局によると、13水力発電所のうち、同制度に基づき国が定めた価格で売電できるのは、運転開始から20年未満の奥木曽(木曽郡木祖村)、大鹿第2(下伊那郡大鹿村)、小渋第3(同郡松川町)の3発電所。現行の中電への売電単価よりも高い単価での売電が可能になる。 さらに、過去に開発を検討した候補地の中から、放流水を活用できる県営高遠ダム(伊那市)と同奥裾花発電所(長野市)で発電所を新・増設し、同制度に基づく売電収入を得ることも見込んだ。 その結果、収支は毎年7千万円以上の純利益を確保できると試算。事業資金は2012年度末の21億5400万円が発電所新設などで16年度末には4億9600万円まで減少するものの資金不足は起きないとする。企業債(借金)残高は12年度末の67億3600万円から段階的に縮減し、29年度には完済できる見通しとしている。 県企業局は、来年度の県予算に、高遠ダムへの発電所新設や奥裾花発電所増設に向けた関連予算を要求する。 非かんがい期しか発電せず、中電への売却計画に入れていなかった西天竜発電所(伊那市)については、従来の廃止方針を維持する一方、地元が存続を求めていることも踏まえ、今後、協議会などを設けて研究を続ける方針という。(長野県、信濃毎日新聞社)
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