伊那市教育委員会は、愛好家らでつくる「戸台の化石保存会」が同市長谷公民館で保管する化石約9千点を一つ一つ電子データにまとめ、デジタル台帳にする事業に取り掛かる。同市では図書館や博物館が、古文書などの地域資料をデジタル化して保存、公開する「デジタルアーカイブ」を構想中。その一環で、化石についても研究や学習に活用しやすいよう、インターネット上での公開を検討する。 戸台の化石保存会は1986(昭和61)年に発足。同市長谷戸台で、アンモナイトやサンカクガイなどの化石を採取する学習会を開いている。化石は散逸を防ぐため、参加者から保存会が預かり、長谷公民館に収蔵して表データにまとめてきた。 デジタル台帳には、採取日や採取者、化石の種類などの情報に加え、化石の画像も記録。学習会で集まった化石のほか、寄贈品も対象とする。同公民館所蔵の古文書や土器の破片などについても記録する方針。来年1月から1年間の計画で進める。 保存会によると、化石採取には県内外から延べ約1700人が参加。過去の参加者や愛好者から、特定の化石を見せてほしいと問い合わせがあっても、資料室から探すのは時間がかかった。市教委高遠長谷教育振興課は「デジタル化が進めば、問い合わせに応じて素早く探す仕組みができる。展示替えや研究への利用もしやすくなる」とする。 保存会の北村健治会長(70)=駒ケ根市出身、東京都在住=は「デジタル台帳で恒久的に保存することで、採取した化石を地元に還元する意義が広がればいい」と話す。 同市では、2009年から市立高遠町図書館が古文書などのデジタル化を開始。市高遠町歴史博物館も、昨年度から収蔵品や民俗資料を対象に進めている。市教委は、化石など長谷公民館の資料も含め、一般の人が検索、閲覧できるデータベースとしての公開を将来的に検討する。(長野県、信濃毎日新聞社)
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