県内の製材業者や工務店などでつくる県木材協同組合連合会は、神奈川県の建設業者などが取り組む丸太を使った液状化対策工法の実証実験に、来年1月から県産のカラマツ材を提供する。実験は、東日本大震災で液状化による被害を受けた千葉県浦安市と木更津市のほか、諏訪湖周辺の軟弱地盤を抱える諏訪市でも予定。地盤に一定間隔で丸太を打ち込み、砂地盤を締め固める工法で、連合会は実用化後、県産材を優先的に利用するよう働き掛ける。 実験は、飛島建設(川崎市)と兼松日産農林(東京)、昭和マテリアル(北海道岩見沢市)の3社が共同でことし6月から実施中。打ち込む丸太の長さや間隔を変えて地盤を補強する効果を検証しているほか、模型を使って地盤に振動を与える実験も行っている。 宅地の液状化対策は、地中の砂にセメントを混入する工法などが一般的だが、飛島建設などによると、丸太は素材として安価で、軽いため扱いやすい利点がある。木材の体積を増やすほど地盤の補強効果が高まる。地下水位の高い地盤の場合、丸太が空気に触れないため腐りにくく、耐久性も見込めるとしている。 同連合会と県は6月、浦安市で3社が公開した初回の実証実験を視察後、協力を打診。飛島建設は長野県産材について「安定して品質が高いものが確保できる。コスト的にも十分使っていける」(技術研究所)と評価する。3社は当初、千葉県産のスギ材を使っていたが、長野県産の方が低価格で加工技術も高いと判断して切り替える。 同連合会は、これまで用途が少なかった比較的細い木材も新工法に使えるため、間伐材の利用促進につながると期待。県林務部は県内でも新工法を普及させることを目指し、住宅を手掛ける設計者ら向けに工法の技術マニュアルなどを作る方針だ。 同部によると、県産材は河川の護岸工事などにも利用されるが、土木用材としての出荷量は1971(昭和46)年の20万5千立方メートルがピーク。2010年には3万5千立方メートルに落ち込んでいる。同連合会の酒井孔三専務理事は「信州カラマツの有用性が実証できれば、土木用材の需要が劇的に変わる。できるだけ安く提供できる体制をつくっていきたい」と話している。(長野県、信濃毎日新聞社)
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