東御市は、市内の旧北国街道海野宿で、昭和初期建築の民家を改修して市営宿泊施設をオープンする準備を進めている。国の「重要伝統的建造物群保存地区」に選定されている海野宿唯一の宿泊施設として、地区の建造物の特徴を伝える場とし、観光客の増加につなげたい考え。2014年夏の営業開始を目指し、来年1月上旬に着工する予定だ。
宿泊施設には、2グループ8人が泊まれる。各グループが2階建て母屋(延べ床面積約179平方メートル)の別々の階段を利用して1、2階1部屋ずつを使う。1階の一部は土間で、利用者は街道から土間を通って中庭に入り、そこから別棟へ移動できる。
明治期建築の2階建て蚕室(同195平方メートル)をレストランにし、両階に計36席を設け、隣に平屋の厨房(ちゅうぼう)を増築する。2階建て物置(同59平方メートル)は休憩もできるギャラリーに、2階建て土蔵(同46平方メートル)は受付などに改修する。
市は10年1月、市内の会社員からこれらの建物の寄贈を受け、同3月に土地約1540平方メートルを購入した。宿泊施設の設計委託料などを含む工事費は2億6710万円。ことし3月、市議会定例会で本年度一般会計当初予算案の中で可決された。施設を運営する指定管理者を本年度中に選定した上で、宿泊料金などを詰める。
市は、地元住民でつくる「海野地域まちづくり検討会議」のメンバーらから施設運営などに関する意見を聞く会を、11月に開催。参加者は民家を見学し、市側の説明を聞いた上で「レストランでは地元の食材を使った伝統的な食事を提供してはどうか」「宿泊客と住民が交流できる場にしてほしい」といった要望を出した。
東御市教育委員会によると、海野宿には現在15軒余の空き家があり、増える傾向という。市商工観光課は「海野宿での生活を体験してもらうことで、住みたいと思う人が増え、空き家の解消にもつながればいい」と期待している。(長野県、信濃毎日新聞社)
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