2012年産の県内のコメが、01年から11年間守ってきた「1等米比率全国1位」の座から転落する可能性が出ている。昨年夏の厳しい残暑による高温障害が原因という。コメ作りへの温暖化の影響は全国的な課題で、各産地は対策に力を入れている。県内は高冷地という条件に恵まれて優位を保ってきたが、県や県農協グループは「油断できない」と危機感を募らせ、対策に本腰を入れる構えだ。 県農業技術課によると、12年はイネの実が太る9月に残暑が厳しかった。特に北信地方の標高が低い地域で、フェーン現象による乾燥した南風が吹き、9月後半以降に収穫されたコメの水分バランスが崩れて実が割れる「胴割れ」などの高温障害が発生した。 その結果、県産米の品質は全体に低下。農林水産省によると、昨年11月末時点の1等米の比率は93・4%で、ともに93・9%だった岩手、奈良両県に先行を許した。検査は同月末時点で全国、県内ともに9割近くが終了。ただ、県内の残りの検査対象は主に高温障害が少なかった南信地方のコメのため、挽回の可能性はゼロではないという。 1等米比率の全国平均は70~80%程度で推移しているが、県産米は1994年から90%以上と高い。コメどころの新潟や富山などの各県が温暖化対策に苦慮する中で、「標高が高くて夜間の気温が下がる好環境に恵まれてきた」(県農業技術課)。だが、近年は県内でも高温障害を無視できなくなっており、県や全農県本部の担当者は「今後は高温対策が鍵を握る」と口をそろえる。 同課などは、高温障害に遭う前の適切な時期の収穫と、稲を冷ますための水管理を徹底する必要があると指摘。近年はコメの味を良くするために肥料を減らす傾向があるが、稲が高温に弱くなる面もあるため、きちんと肥料をやることも重要としている。 さらに、高温障害がより深刻な九州地方などにならい、暑さに強い独自品種の開発にも力を入れる。県農業試験場(須坂市)は、障害が出やすい時期と気温が高い時期が重なるのを避けられる晩生の新品種「風さやか」の種苗登録を11年に申請。味もコシヒカリ並みに良いとされ、同試験場育種部は「今後のいち押し」と期待をかけている。暑さ自体に強い品種などの開発も目指している。(長野県、信濃毎日新聞社)
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